FAQ

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よくあるご質問をご参照ください。


利用について

測定の経験がありませんが、大丈夫でしょうか。
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技術指導員が装置のオペレーションを行いますので、問題ありません。
解析の方法がわかりませんが、サポートしていただけるのでしょうか。
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当事業では、解析の段階のサポートは致しかねます。経験のある範囲内で一般的な解析方法を提示、または解析方法の記載されている文献等を提示してご説明することはできますが、データの解釈に関しまして我々の解析を希望される場合には、共同研究または受託研究をお申込みください。

試料調製について

使われた試薬(蛋白質)を教えてください。
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蛋白質は、凍結乾燥品ヒト血清アルブミン(Sigma-Aldrich, lyophilized powder, ?97% (agarose gel electrophoresis) product no. A9511)を用いました
使われた蛋白質は何に溶かすのでしょうか。
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バッファーに溶かしています。STD用には重水100%で調製した50 mMリン酸バッファーpH6.8を用い、 Waterlogsy用には、軽水90%/重水10%の50mMリン酸バッファーpH6.8を用いていました。一般的に、蛋白質の安定性を保つためには、バッファーを用います。軽水90%重水10%の50mMリン酸バッファーを作成する場合には、軽水100%で55mMのリン酸バッファーなどを作りそこに重水を10%加えます。
使われた試料はどのように調製するのでしょうか。
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バイオアッセイを行う場合と同じ方法で調製しました。
蛋白質溶液の調製方法
まず凍結乾燥品を必要量秤量します。1mMの濃度になる体積のバッファーを用意し、秤量した蛋白質の粉をそこに混ぜ、 泡を立てないようにゆっくりピペッティングして溶かします。蛋白質の粉にバッファーを添加しないようにしてください。 化合物ストックの調製方法
バイオアッセイの場合には化合物はDMSOストックとなっていることが多いと思います。 従いまして、通常化合物は10~100mMのDMSOストック溶液を調製し、そこから必要量蛋白溶液に添加して、よくピペッテッィングして溶解させます。 今回アミノ酸は、DMSOよりも水に溶解しやすかったため、ストック溶液を重水または軽水バッファーで作成しました。 DMSOの濃度について
DMSOの含有率が何%まで大丈夫か、は、蛋白質によってかなり異なります。バイオアッセイを行っておられる方は、 予め化合物のスクリーニングを行う際にDMSO濃度に対する安定性のチェックをされておられると思いますので、担当の方に安定性をお尋ねください。
バッファーは脱気するのでしょうか。
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脱気は、シゲミチューブを使って、長時間の測定を行う際に必要となります。その理由は、シゲミチューブの場合、 脱気をしないと測定の間に気泡が溜り、シムが著しく変化してスペクトルの質に影響を及ぼすからです。 今回のようなスクリーニングの場合は、シゲミチューブを使われるなら必要となるかもしれませんが、ノーマルチューブを使われるのであれば、 必要ないと思います。尚、シゲミチューブの場合でも、1-2回測定を行って出てくる泡を出し切ってしまうと、その後はもはや出ない場合が多いです。
ケミカルシフト標準は加えるのでしょうか。
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ケミカルシフト基準を用いる場合には、用いるバッファーに、標準物質をとかし、その周波数を測定しておきます。 蛋白質の入った溶液に標準物質を溶かしますと、それが蛋白質と相互作用する可能性もありますので、避けた方がよいと思われます。 ブルカーの装置では、基準物質を0 ppmとした場合のSR(spectral reference)というパラメータを同じ値にしておけば、同じバッファー、 同じ温度だと同じシフトとなります(外部参照法)。ただし、ロックをかけるタイミングなどによって、多少のずれはやはり生じます。 水系溶媒にとけるケミカルシフト標準としましては、DSS(Sodium 2,2 - dimethyl -2-silapentane-5-Sulfonate : (CH3)3SiCD2CD2CD2SO3Na) またはTSP ([2,2,3,3-D4] sodium 3-3-(trimethylsilyl) propanoateが一般的です。

測定内容について

リガンド:蛋白質の濃度比はどれぐらいにすればよいのでしょうか。
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実験によって異なります。
STD:池上先生のご講義にありましたように、STDの実験の場合には、蛋白リガンド比が100:1であっても、信号は観測できます。 リガンド濃度によって結果が変わることはありません。100:1ぐらいの比で実験している文献が多いと思います。
WaterLogsy リガンド:蛋白質比が大きすぎるとフリーのリガンドと水とのNOEが大きくなり、結合が検出できない、 “False negative” となってしまいますのでご注意ください。
講習会ではクライオプローブでの測定でしたが、500MHz装置で室温プローブだと
どれぐらいの測定時間がかかるのでしょうか。
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クライオプローブでかつ超高磁場装置だったので、2-3分で測定できました。しかし、500MHzや600MHzの室温プローブでも、15-20分あれば、測定が可能だと思います。
STDとWater Logsyは、どの様に使い分けているのでしょうか?
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一般的にSTDは蛋白質、WaterLogsyは、核酸との相互作用検出に向いていると思います。 講習会の際にも原理を池上先生よりご説明いただきましたが、STDはリガンド信号とかぶらない蛋白質のメチル基領域を照射することにより、 磁化が蛋白質内の結合サイトまで伝わらなければなりませんので、ある程度のプロトン密度が必要となります。 しかし、核酸は、とくに塩基にはあまりプロトンがなく(プロトン密度が低く)、 照射磁化が伝わりにくいと考えられるため、STDは不向きです。一方、Waterlogsyでは、結合水を介した磁化の移動が必要となりますが、 蛋白質では、結合部位に必ず水が結合しているとは限りません。これに対し、核酸では、塩基間には、水のブリッジが出来ており、 結合水が身近にある環境が出来上がっています。このような理由のため、蛋白はSTD、核酸はWaterlogsyが適していると思われます。
どのような文献が参考になるでしょうか。
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“Practical Aspects of NMR-Based Fragment Screening” Methods in Enzymology 493, 219-239, 2011 には、 実験を行う上での注意点が書かれていますので参考になると思います。
講習会で測定したWaterLogsyのスペクトルで、10.2ppm付近に出てくる強度の強い
プロトンは、どのプロトンであるか解析はされているでしょうか。
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トリプトファン (Trp) の側鎖インドール環のNHです。Trpをリガンドとして用いておりましたので、WaterLogsy実験のように、 溶媒が軽水系の場合には、このインドールNHが観えます。 なお、STD実験のように、重水系の溶媒に溶かした場合は、この水素がNDとなってしまうため、ピークが消えてしまいます。
自社の装置で測定した場合、10.2ppm付近のピークはWaterLogsyのみで観測され、 プロトンの一次元スペクトルでは観測できませんでした。 講習会資料(Bluker)では、 プロトンの一次元スペクトルでも観測されているようなのですが、なぜでしょうか。 また、講習会で測定したWaterLogsyスペクトルは、D2O 10%、H2O 90%で測定されて いますが、水消しには何を用いているのでしょうか。
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プロトンの一次元スペクトルを観測される際のパルスは何をお使いでしょうか。 トリプトファンのインドール環のNHは、交換性のプロトンですので、H2Oの1Hと容易に交換してしまいます。 通常の軽水を飽和するような測定方法(pre-saturation法)ですと、飽和した1H磁化がインドールのN1Hにも伝わり、 この信号も水と一緒に減衰、あるいは、消去されてしまう可能性がございます。 実習の1H一次元スペクトルでは、水の領域 4.7ppmを選択的に消去するWatergate法(W3(3-9-19) あるいはW5)で溶媒を消去しております。 WaterLogsy法では、水の消去にexcitation sculpting法を用いています。両者ともに、優劣の差はそれ程ありませんので、お好みに応じて入れ換えることも可能です。
今後、リガンドの交換性プロトンのSTD、WaterLogsyを計測したいと考えているのですが、 それを可能にする方法はあるでしょうか。
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交換性プロトンが、Watergate法やexcitation sculpting法の一次元スペクトルで観測できるものでしたら、WaterLogsy法で観測できます。 ただし、WaterLogsyでは観測できますが、相互作用していることを示すピークと同じ符号(正のピーク)が現れますので、 充分にご注意ください。蛋白質(受容体)無しのreferenceとよく比較する必要があるかと思います。 STD法では、重水溶媒で実験を行いますため、交換性プロトンは観測できません。
STDスペクトルは、軽水より重水で測定した方がよいのでしょうか。
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STDの実験は、重水で行った方が次に示すようなメリットがあります。
①まず、もし軽水を溶媒として使わなくても良い場合には、出来るだけ重水を溶媒として使った方が得です。 これは、NMRでは常に水の巨大なピークを消すことが非常に難しいためです。 特にSTD法では、saturationをかけたスペクトルとかけていない参照スペクトルの差をとりますので、 両者のスペクトルのベースラインがきれいに平らである事が前提条件になります。 しかし、水の巨大なピークは、しばしば、そのベースラインを歪めてしまったりするので、軽水の試料のスペクトルで微妙な差をきれいにとることはなかなか難しくなります。
②またSTD法では、蛋白質の信号を選択的に飽和しますが、軽水の場合では蛋白質表面の結合水を介して軽水全体にも飽和磁化が流れてしまい、 効率よく蛋白質の信号の飽和が行えません。蛋白質の信号の飽和が不十分ですと、当然結合したリガンドの1Hにも飽和磁化が伝わりませんので、 STD信号の強度が下がり、検出されにくくなります。重水で行いますとそのようなことが起こりませんので、結果として軽水よりも重水で実験を行った方がSTD信号強度が強くなります。
Tr-NOE実験で蛋白質ーリガンド間のNOEを観測できますか。
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Tr-NOEを測定する一般的な条件では、リガンドのモル量に対して、受容体蛋白質のモル量を少なく(例えば、1/100)しか入れませんので、 実際には分子間NOEは観えないと思います。分子間NOEが観えるためには、非常に少ない受容体蛋白質側の1Hからリガンド側の1HへNOEによる磁化移動が起こる必要があります。 しかし、上の例ですと、1から100へ磁化移動を続ける必要があり、この量比ですと源がすぐに枯渇してしまいます。一方、リガンド分子内のNOEによる磁化移動は100から100への移動ですので、 十分に源が存在します。この時の受容体蛋白質の働きは、リガンドの回転を抑えて(高分子のように見せかけて)磁化移動のスピードを上げるだけです。 ただし、受容体蛋白質のモル比を上げていくと、分子間NOEも観え始めることもただし、受容体蛋白質のモル比を上げていくと、分子間NOEも観え始めることもあるかもしれません。 しかし、そのNOEが蛋白質内のNOEか分子間のNOEかを区別することはこの実験からでは大変難しいと思います。 一般的に、Tr-NOEは、リガンドの結合、非結合の状態がNMRのタイムスケールでfast exchangeにある場合に適用される実験です。 このような場合、リガンドが蛋白質と結合している時間が短いために、分子間NOEを観測することが難しい場合が多いように思います。
STDのピーク強度は、実際の溶液中の蛋白質との結合の強さを
観測しているのでしょうか。
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ラフにはそのようになると考えられますが、定量的に解析する場合には、当てはまりません。 それは、NOE (saturation) の磁化移動のスピードにはいろいろな要素(例えば、ダイナミクスや、周りにどの程度の数の1Hが取り巻いているか) によって変化してしまうためです。Mixing-時間を振りながら、NOEのbuild-up-curveを作り、初期速度を採り出してくると、幾分定量的な情報を取り出す事は可能です。 しかし、かなりの大仕事となります。 STDの信号強度から、リガンドの結合コンフォメーションを推測することは難しいですが、蛋白質とどの部位で結合しているかを推測することは可能とされています。 Mayerらの論文によりますと、STDのamplification factor(I0-Isat)/I0 から結合部位のエピトープマッピングが可能と報告されています (JACS 123, 6108-6117)。
STD測定の際、蛋白質を照射する位置は、使用する蛋白質、リガンドによって変える必要は ありますか。 また、照射する位置によってSTDのピーク強度は変化しますか。
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リガンドに照射が当たらないようにしないといけませんので、原則的にリガンドが変われば、 照射位置にリガンドのピークが被っていないかどうかを注意する必要があります。 Saturationは急速に(超高分子量の)受容体蛋白質全体に広がりますので、照射位置を少し変えても、それ程の影響は出ないと思います。 しかし、あまり(例えば)メチル基から遠過ぎたりすると、受容体に十分にsaturationが伝わらず、STDの結果は異なったものになるでしょう。

その他

秘密保持契約書に鋳型はあるのでしょうか。
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大阪大学の鋳型がございます。これを基にして、秘密保持契約書案を作成してください。